我が家の本棚には、35年以上前の育児書『最新育児の百科』がでかでかと鎮座しています。
妻の妊娠後期になって「お前(ぽんパパ)や姉が生まれた時に使ったものだから」と私の実家から送られてきたものです。
実はこの本、35年前のものと書きましたが、それは最新版第1刷(本書)で、第1刷は1967年発行と、57年も前に発行された本なのです。
その時は、「なんと有難迷惑な!」と思ったのを覚えています。
「50年以上も前の育児書の内容なんて役に立つわけがないだろう。」
「そもそも現在の認識と異なる間違ったことが書いてあるんじゃないのか」
と思い、あまりの大きさに古本屋に売ることさえ考えました笑
しかし、実際に中を見てみると
この本は、育児を懇切丁寧に解説しており、かつ赤ちゃんや母親に寄り添った素晴らしいものでした。
800ページ以上あるので、すべて読んだわけではありませんが、1歳までは1か月ごとに「育て方」や「環境」、また「起こりうるリスク」やその「対応」について詳細に記されています。
さらに素晴らしいのは、
単なるHOW TO本ではなく、育児における悩みに対するアドバイスや心の持ち方、父親の役割といった精神面にかかわる部分まで言及されている点です。
今回はそんな『育児の百科』の中で、私が印象に残った、学びがあった内容についてご紹介します。
「父親になったひとに」より、父親の大事な役割を理解する
【父親になった人に】より抜粋
赤ちゃんが帰ってくる。君もいよいよお父さんだ。家庭のお父さんである君に一言いっておきたい。
君は年々200人の母親が子殺しをすることを知っているか。
彼女たちは簡単に「育児ノイローゼ」といわれるが、実は核家族時代の犠牲なのだ。育児という重労働を、ひとりでいままでの家事のほかにやらなければならないのだから、女の一生でいちばん骨の折れる時代だ。ことに、初産の場合は毎日毎日が未経験のことばかりだ。以前の大家族の時代には、古い世代がそばにいてくれた。いまは若い母親がひとりでせおわねばならぬ。父親が手伝わなかったら母親はせおいきれない。子殺しをした母親のおおくが、育児に協力しない夫をもっていた。
【中略】
育児は女の仕事だといって、この本も全然よまないという人もあろう。赤ちゃんに何も事がおこらなかったら、それでもいい。だが何か赤ちゃんに事がおこったら、よんでほしい。そして一緒になって考えてほしい。
私が一番驚いたのはこの内容でした。
古い書籍なので、てっきり「育児は女性のするものだ」くらいの勢いで書かれているのかと思いました。
しかし実際には、母親のワンオペがいかに大変か、そして男性が家事や育児をしないのは古い思想にすぎないとはっきりと言及されています。
さらには、父親が出産や育児で仕事を休むのは、時代の変化から考えても自然なことだという旨の記載まであります。
今の時代でこそ、この考えが定着しつつあるように思えますが、当時からすれば、ものすごく時代の先を行っていたのは間違いないと思います。
発行当初にこの本を読んだ人がどのように感じたのか、とても興味があります。
また、嬰児殺について調べたところ、1970年ごろをピークに減少傾向にあるようで、2021年には9件となっています。
現代ビジネス参照(https://gendai.media/articles/-/114057?page=3)
とはいえ、言い方が変わっただけで、「産後うつ」は未だに大きな問題になっています。
そばにいて相談に乗る、そして一緒に考える、それだけでリスクが減らせるとしたら。
父親の役割はとても重要ですね。
「テレビをみせていいか」より、スマホ育児について考える
【テレビを見せていいか】より抜粋
この頃の子どもにとって、テレビは生活の一部になっている。【中略】以前のように子どもが好きな時に表の戸をあけて道路にでられた時代では、子どもは自分の目と耳でじかに現実にあたって、見聞を広めることができた。今の子どもは、道路が危ないから、自由に外に出してもらえない。子どもは「軟禁」されている。そういう子にとって、テレビは現実への窓である。この窓をしめて、それにかわるものを親が与えるのには、よほどの決心がいる。まず親がテレビを見ない決心をしなければならぬ。テレビを家庭から追放するのだ。それだけの力を親たちがもっていたら、その家庭は見事なものだ。
【中略】
親がテレビを追放できなかったら仕方がない。テレビは子どもの見聞を広げてくれる、友だちとの共通の話題をもてるというようなことで、みずからなぐさめるよりほかはない。そして目の前で子どもが俗悪になっていくのを見送るしかない。自由世界の支払っているもっとも高価な代価というべきだ。
本書では「テレビ」ですが。これは現代でいうところの「スマホ・タブレット」にそのまま置き換えられると思います。
私の個人的な意見としては、育児にスマホやタブレットを使うのは大いに賛成です。
今の時代、親世代はほとんど100%スマホを持っています。そして子供の前で使うことも多いはずです。親がそれだけ夢中になっているものを、子供に興味を持つなというのは無理な話です。
ただし、依存は避けるべきです。
そのため我々親ができることとしては、本書にもあるように、それに代わる「現実の窓」を与える、ことだと思います。
できるだけ一緒に色々な場所に赴き、色々な人と交流する。そういう外の世界との接点を増やしてあげることで、興味が自然と外にも向いて、スマホやタブレットとの適度な距離感が維持できるのではないでしょうか。
「お誕生日ばんざい」より、育児において大切なことを学ぶ
【お誕生日ばんざい】より抜粋
人間は自分の生命を生きるのだ。いきいきと、楽しく生きるのだ。生命を組み立てる個々の特徴、たとえば小食、たとえばたんがたまりやすい、がどうあろうと生命をいきいきと楽しく生かすことに支障がなければ、意に介することはない。小食をなおすために生きるな。たんをとるために生きるな。
【中略】
赤ちゃんの意志と活動力とは、もっと大きな、全生命のために、ついやされるべきだ。赤ちゃんの楽しみは、常に全生命の活動の中にある。赤ちゃんの意志は、もっと大きい目標に向かって、鼓舞されねばならぬ。
育児をしているとどうしても、
「あの子は息子と同じ月齢なのにもう首がすわっている」とか「離乳食はみんないつスタートしているんだろうか」と周りを意識してしまいがちでした。
もちろん成長曲線は大事な目安なので、成長に異常がないことを確かめるためにも重要です。
でも結局は「息子がいきいきと楽しく生きていればそれでいいんだ」ということに気づかされ、
心にゆとりが持てた気がします。
個々の特性は人それぞれ、周りと違っていても気にしない!
これから先も、息子の全生命の活動を全力で鼓舞していこうと思います。ガンバレ息子!
最後に
今回は、35年以上前の素晴らしい育児書『育児の百科』を紹介しました。
この素晴らしい書籍をみんなにも知ってほしいという気持ちで記事を書いていましたが、なんとこの本、2019年にツイッター(現X)で話題になっていたようです。
(本章「最後に」を書いているところで初めて知りました笑)
「なんだみんな知ってたのかー」とちょっと残念な気持ちになりましたが、それ以上に「自分の感性は間違っていなかった」とうれしい気持ちのほうが強いです。
これだけ時代が変わっても、再び話題になるということは、この本が素晴らしい本であることの裏付けですね。
また現在では、文庫本サイズになっているだけではなく
【上巻】~5ヶ月
【中巻】5ヶ月~1歳6ヵ月
【下巻】1歳6ヵ月~
と分割されているので手に取りやすいですね。
また、親世代の育児書を見るということは、自分が育児される立場だった時、世の中はどんな風潮だったのか。
そして自分の親はその風潮とどう向き合ってくれていたのか。
それを知ることができる貴重な機会でもあると思います。
私も、息子に子供が生まれるときには
この本を送ってあげる、、かどうかはわかりませんが笑
少なくとも古本屋には持ち込むまず、大切に持ち続けようと思います。
Wrote this article
ぽんパパ
2024年6月に第1子(息子)が誕生した好奇心旺盛パパ(30代前半) 1年間の育児休暇を通じて、パパのための育児情報を発信中! 田舎が大好きで、これまで8県で居住(各県2年以上)。 【趣味】 映画⇒500本以上所持。 ゲーム⇒10時間ぶっ通しは余裕。 キャンプ⇒道具が好き、焚火も好き。 資産形成⇒20代で『老後〇〇万円問題』の純資産突破。